セメント製法の革靴で靴底が剥がれた!直せるのか?

プラダの靴(セメント製法)だが、どこか様子がおかしい。おわかりだろうか。

セメント製法の靴を履いていると、いつか訪れるこの瞬間。

「履き心地がいつもと違うな・・・」

そう思って足元を見ると愕然!靴がワニのように大口を開けている・・・

答えは、「靴底が剥がれている」ということ。物によっては直せるので安心しよう。

「でも、高いお金を出して買った思い出の靴、諦めたくない」

そうお考えのあなたに、革靴歴数年・元コレクターの筆者が「セメント製法の革靴修理」について解説しよう。

セメント製法は靴底(ソール)が剥がれやすい

靴底が剥がれる、という現象のほとんどは「セメント製法」と呼ばれる製法で作られた靴で起きる。

セメント製法とは?

靴底を縫い付ける方式でないため、接着剤が劣化すると剥がれてしまう。

アッパー(皮の部分)とソール(靴底)を接着剤で張り合わせて靴を作る。

一般的に2万円未満の低価格帯の革靴に多い製法だ。

ただし他の製法に比べてデザイン等の自由度が高く、ハイブランドや高価格帯の靴でも使われることがある。

同様の理由で、レディース靴では高価格帯であってもこの製法がメジャーだ。

一般的に「修理はできない使い捨ての靴」などと揶揄されるが、理論的に修理は可能だ。

意外と高い靴にも使われている

ちなみに、筆者のプラダは13万円。れっきとした高級品だ。 画像出典:プラダ

筆者のプラダの他にも、フェラガモやバリーは紳士靴であってもセメント製法の靴が多い。

どれも作り自体は丁寧だし、素材も上質なものが使われている。

しかし、こうしたインポート系セメント靴は特にソールが剥がれやすい。

日本の高温多湿な気候と相性が悪く、接着剤が劣化してしまうのである。

直す方法もあります

しかし、ソールが剥がれてしまっても諦める必要はない。

もともと接着剤でついていたものなので、新しいソールを元通り貼ればいいだけのことである。

気になるお値段

剥がれた靴底を修理する場合、内容としては「オールソール」になる

お値段はだいたい9000円から。仕様にもよるがおおよそ15,000円ほど見ておけばいいだろう。

「元の靴の値段よりも高い」と思う場合は諦めたほうがいい

低価格帯のセメント製法の靴は耐久性が低く、オールソールの負担に耐えられないことも多いからだ。

逆に、上質な素材と丁寧な造りのセメント製法の革靴であれば、その魅力をさらに高めることができるだろう。

オールソールは靴底の張り替えという意味だ。古い靴底(ソール)を剥がし、新しい靴底をインストールする。

ただし、自家修理はやめましょう

オールソールは靴修理の中でもトップクラスに大掛かりのものだ。

つまり、プロでも気を使う難易度の高い仕事となる。

実際に駅などにある靴修理店でも、オールソールは店舗では対応せずに工場に送る場合がほとんどだ。

また、靴のソールに使う接着剤は簡単に手に入るものではない。

靴用の接着剤自体はホームセンター等に売ってはいるものの、使いにくいし接着力は十分とは言えない。どんなに器用な人でも、仕上がりは悲惨なほどに汚くなる。

オールソールは素人が安易にできる作業ではないのである。

貼るんじゃなくて縫うのも手

靴底を取り替えた筆者のプラダ。ただソールを交換するのではなく、剥がれにくくなる「ひと工夫」をオーダーした。

オールソールしたいなら、また剥がれてしまうようなセメント製法ではなく、別の方法に変更することをおすすめする。

マッケイ製法

セメント製法からの製法変更で一番メジャーなのが「マッケイ製法」だ。

セメント製法は接着のみで底付け(アッパーとソールをつなげること)を行うが、マッケイ製法は「接着+縫い」で底付けする。当然、接着よりも縫製のほうが耐久性が高いため、ソール剥がれの再発防止に威力を発揮するのだ。

筆者のプラダはこの製法で修理を行った。

before

セメント製法だったときのプラダの中底。

 after

「ひと工夫」とはマッケイ製法に変更したこと。 中底に現れたステッチが、マッケイ製法の特徴だ。

難点としては水に弱く、濡れた路面を歩くだけで中底を濡らしてしまったり、雨の日に履くと浸水してしまう。しかし、これはかんたんに解決可能だ。

画像出典:リーガル
一般的なマッケイ製法の靴。縫い目が靴底に露出しているため、濡れた路面では糸を伝って水が侵入する。

その方法とはソールを「2枚仕立て」にすること。ミッドソールを追加してもらおう。アッパーとミッドソールを縫いつけたあと、ミッドソールとアウトソールを接着するのだ。

水色で囲った部分がミッドソール。実は、靴底が2段構えになっているのだ。

こうすることで縫い目を塞ぎ、水の侵入を防ぐことができる。

アウトソールにおすすめの底材は「スポンジソール」と呼ばれる発泡ウレタン製のもので、靴の重量がスニーカーのように軽くなる

筆者のプラダもVibram製のスポンジソールを使用しており、ゴツい見た目に反してとても軽い仕上がりになっている。

ミッドソール付きの方法にすると、このように本底に縫い目が露出しない。つまり、マッケイ縫いを保護することができるのだ。

ただし、このような製法変更は修理店の受付の人にはわかってもらえない場合もある(筆者はそうだった)。

そんなときはこの記事を見せ、「このプラダと同じような仕様にしてほしい」と言ってみよう。靴のソール交換を行っているお店なら、まず対応してくれるはずだ。

直さないほうがいい場合ってあるの?

ここまでは修理する場合について解説をしてきたが、直さないほうがいい場合もある。

安い靴の場合は諦める

2万円未満の価格帯の靴は耐久性が低く、オールソールしようとするとアッパーが裂けてしまったりする。

内装が革で仕立てられ、相応にコストがかけられた靴であればオールソールする価値があるといえるだろう。

逆に内装がメッシュだったり、簡素な造りの場合は買い替えを検討すべきだ。

俺の洋装
俺の洋装

アッパー(革の部分)の状態が悪い時は諦めたほうがいい

これは靴の価格帯やクオリティ問わず言えることである。

よくあるのが、アッパーの革が裂けている場合やひび割れている場合。

ソールは何度か交換することができるが、アッパーは交換することができない。

そのため、「靴の寿命=アッパーの寿命」とも言うことができる。

また上記のように裂けやひび割れがある場合、そもそもマッケイ製法へのオールソールに耐えられない可能性もある。

まとめ

ソールの剥がれたセメント製法の革靴は、修理して使うことができる。

しかし、

  • 簡素な作りの安い靴
  • アッパーに裂けやひび割れのある靴

は諦めたほうがいい。

修理の際は「オールソール交換」となり、お値段は1万円台となる。

このときに、セメント製法ではなく他の製法にしてしまおう

筆者のプラダのように、セメント製法でもいい靴はたくさんある。

もしあなたの靴が上質なものであれば、諦めずに修理して使うことをおすすめしたい。

関連記事

TOP