「使い込んだ革靴を洗いたいけど、具体的にどうすればいいの?」
こういった疑問はないだろうか?
実は、革靴は洗ったほうが長持ちする。ただし、革靴には正しい「洗い方」がある。やみくもに水洗いすればいいというものではない。
靴は1日に「コップ1杯分」の汗を吸収するため、雑菌や水虫の温床になる。定期的にクリーニングすることで足臭や水虫といったトラブル回避にもつながるのだ。
この記事を読み終える頃には
・洗える革靴の種類
・革靴の正しい洗い方
が明確に理解できる。それではいってみよう。
目次
まず、丸洗いができるか判断する
写真のように一般的な革靴は、まず問題なく水洗いができる。しかし、下記にあげるような靴は洗う際に注意が必要だ。素人では難しい部分もあるため、プロにお願いすることも検討してみよう。
今回は、↑のリーガル製ローファーを水洗いしつつ、解説していきたい。
水洗いが難しい靴
エキゾチックレザーの靴
クロコダイルやリザード、オーストリッチは一般的な牛革と比べて扱いに注意が必要だ。風合いを損ねる可能性もあるため、自分で洗うのは避けたほうが無難だ。
クレープソールの靴
クラークスのデザートブーツなどに多い底材で、生ゴムで作られている。しかし粘着性が高い特性をもっているため、洗剤などを吸着して白濁してしまうケースがある。自家洗いはおすすめできない。
ビンテージシューズ
製造から20年以上経過した靴は各部の劣化が進行しているため、水洗いに耐えられないケースがある。特に内装の革がバキバキに割れ、余計な修理費がかかるケースが多いので注意しよう。
状態の悪い靴
こちらもビンテージシューズと同様の理由からおすすめできない。履きつぶした靴は買い替えたほうが無難だ。
革靴の丸洗い方法
あなたの靴が水洗いに耐えられそうなら、一度丸洗いに挑戦してみよう。
ここからは具体的な水洗い方法を解説する。
必要な道具
水洗いに使う道具は以下の通り。
最低限必要なもの
●バケツ・たらい
靴が入る大きさのものを選ぼう。開口部の大きいたらいのほうが作業しやすい。
●サドルソープ
革用の洗剤だ。なければボディソープで代用できる。
●スポンジ
ネットに入っていない、四角いタイプが使いやすい。
●使い古しの歯ブラシ
靴に溜まったホコリを掃除するために使う。
●リグロイン(ステインリムーバー)
洗う前の脱脂作業に必要だ。リグロインなら1回できれいに落とせる。
●馬毛ブラシ&豚毛ブラシ
馬毛はホコリ落としに、豚毛は仕上げに使う。必ず両方用意しよう。
●デリケートクリーム
乾燥・仕上げのときに使う。革に必要な水分・栄養分を補給できる。
●油性クリーム
仕上げに使う。革に必要な油分を補給する。
●綿100%の布
脱脂作業と仕上げの磨きで使う。2枚以上用意しよう。
あると便利なもの
●ビニール手袋
リグロインを使う場合のみ必要だ。肌の弱い人は指を痛める可能性があるため、ビニール手袋で指を保護しよう。
●新聞紙 or シューキーパー
乾燥のときに使う。どちらか1つあれば十分だ。
丸洗いの手順
①下準備
水につける前にホコリの除去と脱脂を行っていこう。靴紐や中敷きは邪魔になるので外しておく。
まずはホコリ除去から。ホコリが付着しているとカビの原因になるので必ず行ってほしい。
靴の外側は、通常のお手入れと同じように馬毛ブラシをかけていく。靴の内部も必ず行おう。古い歯ブラシを使い、溜まったホコリをかき出していく。特につま先は靴下の繊維が溜まっていることが多いので重点的に行おう。
脱脂はリグロインを布にとって軽く表面をなでていく。強力な脱脂効果があるので、肌の弱い方はビニール手袋をはめて行ってほしい。
ステインリムーバーを使う場合は数回に分けて汚れや油脂を落としていこう。
②漬け込み(1回目)
この工程では靴を均等に濡らしていく。まずはバケツにぬるま湯を張ろう。シャワーのお湯で十分だ。
次に靴を入れ、表面の色むらがなくなるまでつけ置きする。
色むらが残ったままだとシミの原因になるため、必ず色が均一になるまで漬け込みを行おう。また、きちんと脱脂ができていないと水の浸透が遅れ、漬け込みに1日中かかってしまう。脱脂はきちんとやっておこう。
③サドルソープで洗う
漬け込みが終わったらいよいよ洗剤で洗っていく。サドルソープをスポンジにとり、たっぷり泡立ててから行おう。靴の外側と内側をスポンジで擦り、汚れを落としていく。
とくに忘れがちなのがコバの部分だ。スポンジの角を使い、丁寧に汚れをかき出していこう。
サドルソープは代用できる
サドルソープは優れた石鹸だが、1000円ほどかかってしまう。安く上げたい場合はボディソープを使うのも手だ。この場合は両足で2プッシュ程度に留めてほしい。たくさん使いすぎるとすすぎが大変になるし、乾燥後も靴に残って白く浮き出てしまう。サドルソープと同じ使い方でもいいし、ボディソープは水に溶かし、靴を浸けながら洗ってもいいだろう。
④漬け込み(2回目)
次はすすぎの工程だ。シャワーで泡を流し、きれいな水につけ置きをする。時間は1時間程度で十分だ。
「サドルソープは革の栄養分が入っているため、すすぎは良くない」との言説もあるが、いくらサドルソープといえどしょせんは石鹸だ。すすぎを行わないと表面に白く浮き出てしまう。「多少」成分を残す程度の感覚で行うといいだろう。
すすぎが終わったら、タオルを使って水気を切ろう。次は乾燥の工程だ。
⑤乾燥
水洗い最大の難関が乾燥の工程だ。初心者にありがちなのが
・カビさせてしまう
・革をカサカサにし、ダメージを与える
というものだ。この2点を回避すれば、丸洗いは成功と言っていいだろう。
中底まで乾燥したら、この工程は終了だ。重要なことなのでもう一度。中底まで乾燥したら、乾燥の工程は終了である。
表面は比較的早く乾燥するが、内部は湿ったままなことが多い。この状態で乾燥を切り上げると、高確率でカビさせる。3日ほど乾かし、中底の乾燥を確認してから仕上げの工程に入ろう。
乾燥を切り上げるタイミングは非常に重要なので、最初にお伝えした。では、具体的な作業工程を解説していこう。
乾燥は写真のようにつま先を上にし、壁に立てかけて行う。
水が出てくるうちは何も入れないほうがいい。靴自体が水を吸ってとてもデリケートな状態になっているため、シューキーパーなどを入れると負荷に耐えられずに壊れることがあるからだ。
水が出なくなってきたら、シューキーパーや新聞紙を詰める。この段階になったら、半日に1回の頻度でデリケートクリームを入れていこう。この作業をすることで革へのダメージを防ぐことができる。
⑥オイルアップ
最後の仕上げの工程。乾燥が終わったら、デリケートクリームと油性クリームを使ってお手入れをしていこう。
具体的な方法は下記の記事を参考にしてほしい。
さて、丸洗いが終わった靴がこちら。いかがだろうか?
まるで新品、いやそれ以上にきれいになったのではないだろうか。いい革靴は履くほどに「育って」くれるので、独特な雰囲気や表情が出てくるものだ。
丸洗いは年1回は行おう
足は1日にコップ1杯分の汗をかく。靴はそれだけ大量の汚れを吸い取るということだ。
こうした汚れは雑菌や、水虫の原因となる白癬菌の温床となる。加えて雑菌が皮脂や汗の成分を食べるときに嫌なニオイを発生する。これが足に染み付き、足臭の原因となる。
特に白癬菌は靴で繁殖し、足に乗り移ることもできる。こうなると水虫に感染し、かゆみなどのトラブルに発展する。
足臭や水虫を防ぐためには、靴を不衛生な環境にしないことが絶対条件だ。
汗は水溶性の汚れのため、水を使ったお手入れが最も根本的だ。皮脂もサドルソープで落とすことができる。
水を使った定期的な丸洗いこそが、靴のトラブルを防ぐ方法なのだ。
自分で難しい場合はプロに頼むのも手
そうはいっても、
「自分では難しいかも・・・」
「忙しくて丸3日も手間をかけられない・・・」
という考えを持つ方も多いはずだ。そういうときはプロに頼むことも賢い方法だ。
3000円ほどで行えるので、一度丸洗いの効果を体感してほしい。
現在では靴の水洗いを専門に行なっている業者も増えてきている。「くつリネット」というサービスは1足2,480円から革靴の水洗いを依頼できるので、利用してみるといいだろう。