革靴はどれくらい伸びるのか?【対処法も解説】

「革靴は伸びる」とよく言われる。

革靴を購入する際、「本革なので伸びます」と言われることもあるだろう。

「サイズが変わるのなら、サイズ選びはどうしたらいいのかわからない」

「もし必要以上に伸びてしまったら、調整する方法はあるのだろうか?」

こういった疑問はないだろうか。

革靴がどのくらい伸びるかは、その革靴の製法や素材が大きく関係してくる。つまり、伸びない靴と伸びる靴があるということだ。

そして、伸びる靴の場合は「どのくらい伸びるのか」も靴によって変わってくる。もし必要以上に伸びてしまったら、ある程度はサイズ調整をすることも可能だ。

この記事を読むことで、

・革靴が伸びるメカニズム

・伸びる革靴の種類

・実際、革靴はどれくらい伸びるのか?

・伸びてしまった場合の対処法

が明確に理解できる。それではいってみよう。

革靴が伸びるってどういうこと?

最初に結論を言うと、革靴の「伸び」は、皮革繊維が使用によってほぐれることで発生する。

革靴は「革」という素材でできている。「なぜ伸びるか」を知るためには、まず革という素材の特性を知っておく必要がある。

つるっとした外見からは想像できないかもしれないが、革という素材は繊維質でできている。もっと正確に言うと、2層構造になっているのだ。革の表面には「銀面」と呼ばれる層があり、その奥にぎっしりと詰まった繊維層(床面)が存在する。

革靴を使用すると、この繊維層がほぐれ、繊維同士の間隔が開くようになる。そうなると体積が増えるため、「伸びる」という現象につながるのだ。

一方の銀面も、繊維層に引っ張られる形で伸びていく。

伸びるのは横方向だけ。縦方向には伸びない

革が伸びる仕組みを理解したところで、一つ注意点がある。それは、「靴の場合、横方向にしか伸びない」ということだ。

ここまでの理屈でいうと、「革靴は全部革でできているから、縦にも横にも伸びるはずだ!」となるだろう。しかしそれは違う

靴のつま先とかかとにはが入っており、上下方向には伸びないようになっているからだ。もし靴が上下方向に伸びると、サイズ刻みで製造する意味がなくなってしまうし、使う側からしても履きづらいことこの上ない。

あくまで伸びるのは横方向だけ、この原則はしっかりと抑えておこう。

どんな革靴が伸びるのか

ここまで読んでいただいた方は、「革靴が伸びる」仕組みの基礎的な理解ができているはずだ。

では、具体的に「どんな革靴が伸びるのか」について説明していこう。

本革の靴だけが「伸びる」

伸びる革靴は「本革」の靴のみだ。

ここでいう「本革」とは、一般的な銀付き革に加え、スエードなども含まれる。コードヴァンなど一部のマニアックな革は例外だが、牛革であれば基本的に伸びる

一方、合成皮革の靴は縦方向はもちろんのこと横方向にも伸びない。なぜかというと、「そもそも本革ではない」からだ。合成皮革も2層構造になっているものの、伸びない材質を使っている。合成皮革は銀面の代わりに樹脂を、繊維層の代わりに布帛を用いているが、いずれも伸縮性はない。

グッドイヤーウェルト製法はサイズの変動が大きい

材質以外の理由で「伸びやすい」靴もある。

リーガルの高級ラインやジョンロブ、エドワードグリーンなどの高級靴に採用されることの多いグッドイヤーウェルト製法」で作られた靴は、履き慣らすとサイズがゆるくなる傾向にある

グッドイヤーウェルト製法の靴は靴底の内部に、緩衝材としてコルクが敷き詰められている。加えて中底(インソール)に厚手の革が使われているため、履き込むごとに足の形に合わせて「沈んで」しまうのだ。

これによって足にあった靴に「育つ」ものの、同時に足の入るスペースが広がってしまう

こうした高級な靴を買う場合、わざときつめのサイズを選ぶのがセオリーとなっている。

実際、どのくらい伸びるのか

一般的な革靴の場合

グッドイヤーウェルト製法でない革靴の場合、一般的には大きなサイズ変動はない

ただしスエードは伸びやすい傾向にあるため、心配な場合はハーフサイズほど下げて買ってもいいだろう。

逆にスエード以外の場合、下手にサイズを下げて買ってしまうときつくて履けなくなってしまうので要注意だ。

グッドイヤーウェルト製法の革靴の場合

高価格帯の靴に多いグッドイヤー製法だが、履き慣らすとハーフサイズほど大きくなる

ただしこれは目安で、靴によってはワンサイズ近く大きくなる場合もある。

こうしたサイズの変動幅に影響するのは靴底の内部に入っている緩衝材(コルク)の充填量だ。

靴底を外したグッドイヤーウェルト製法の靴。内部にコルクが充填されている。

コルクの量が多ければ多いほど、変動幅は大きくなる。ただし外からは確認できないため、メーカーごとの口コミを集めたり、店員さんに聞くなどして確認したほうがいいだろう。

グッドイヤーウェルト製法の場合は最初からジャストサイズで買わないことが重要だ。

革靴が伸びた場合の対処法

愛用の靴が伸びてしまった場合、ある程度のサイズ調整が可能だ。

インソール(中敷き)を使うことで、大きくなってしまったサイズを調整することができる。

ただし、「どれくらい伸びたか」という度合いは人それぞれのはずだ。ハーフサイズ大きいという人もいれば、ワンサイズ大きくなってしまったという人もいるだろう。まず革靴がどれくらい大きいのかを把握し、適切なインソールを選ばなくてはいけない。

インソールを選ぶときのコツは、「厚み」

インソールを選ぶときは、まず「厚み」を見ておけば失敗がない

厚手のインソールを選べばワンサイズほど小さくできるし、薄いものを選べばハーフサイズ〜1/4サイズほど小さくできるだろう。

革靴でおすすめなのは「サフィール」のインソールだ。表面に吸湿性・耐久性に富むシープレザーを使用している。このため、長く使えるだけでなく靴が蒸れるのを軽減することもできる。まさに一石二鳥のアイテムだ。

ハーフサイズ大きい場合

薄手タイプのシープレザーインソールを使ってみよう。

これくらいの厚みであれば、ハーフサイズ(0.5cm)程度のサイズ調整に向いている

薄手ではあるものの、裏側には低反発のクッションが配されているので履き心地もソフトになる。

ワンサイズ大きい場合

ワンサイズ大きい場合、厚手のインソールを使うことになる。

こちらのインソールはさらに本格的な仕様で、土踏まずからかかとにかけてガッチリとしたフレームが入っている。これによって足の形を支え、長時間の歩行や立ち仕事でも疲れづらくなっているのだ。もちろん、間に低反発のクッションが入っているため、足当たりは適度にソフトになっている

ただし、短靴に厚手のインソールを入れるとかかとが抜けてしまう場合があるので注意しよう。履き口の位置が浅くなってしまい、かかとを満足にホールドできなくなる可能性があるのだ。こうなると歩き方が乱れ、体に負担をかけてしまう。サイズ調整は諦めることになるだろう。捨てる前に一度革靴の買取業者に査定してもらうのもおすすめだ。ある程度の価格がする本格靴なら中古でも人気のため、意外と値段がつく

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