革靴は通気性が悪く、雑菌が繁殖しやすい環境だ。
雑菌が繁殖すると、ニオイや水虫といったトラブルにもつながりかねない。
「じゃあ、臭くなるのも我慢して使い続けないといけないのか?」
実はそんなことはない。
革靴は「正しい」使い方をすれば、蒸れやニオイとは無縁の存在にすることができるのだ。それは決して「涼感インソール」や「消臭スプレー」といったお手軽で、一時的な効果しか得られないものではない。靴を使うときの「習慣」を変えることで、永続的に雑菌の寄り付かない革靴を使い続けることができる。
この記事を読み終える頃には
・雑菌の寄り付かない革靴の「正しい使い方」
・雑菌を一掃する究極の「お手入れ方法」
が明確に理解できる。それではいってみよう。
目次
革靴に雑菌が繁殖するのは「使い方が間違っている」から
ほとんどの人は革靴の使い方を「間違って」いる。
どこが間違っているのか?全てだ。
革靴を選ぶとき、革靴の履き方、お手入れの方法・・・これら全てにおいて、足にも靴にも良くない使い方をしているビジネスマンがほとんどだ。それくらい、日本人の「革靴リテラシー」は低い水準にとどまっているということを、まずはお伝えしておきたい。
これから挙げる使い方は靴に雑菌を繁殖させ、足臭や水虫を引き起こし、靴と足、そして精神にダメージを与える例だ。当てはまっていると思った方は、ぜひ早急に改善してみよう。
同じ靴を毎日履く
雑菌が繁殖する環境を作り出す最高の方法は、同じ革靴を連日使い続けることだ。
雑菌の好む「不衛生な」、つまり高温多湿で、餌となる皮脂や角質の欠片が豊富な環境を作り出すことができる。
革靴は1日にコップ1杯分の汗を吸収すると言われているが、2日程度休ませれば汗の水分は飛んでいく。しかし連日使用すると乾燥期間が十分にとれないため、湿気を継ぎ足すことになる。
皮脂や角質の欠片についても、連日使用すれば溜まるスピードは早くなる。
サイズが合っていない靴を履く
スニーカーと同じサイズ表記の革靴を選んでいないだろうか?だとしたら、サイズ選びが間違っている。
革靴はスニーカーに比べて1〜2cmほど大きく作られている。両者は構造が違うため、サイズ規格を統一できないのだ。
大きすぎる革靴を履くと、足を痛めるのに加えて発汗量が増える。靴の中で足が固定されないため、無意識に踏ん張ろうとしてしまうからだ。
発汗量が増えると高温多湿になりやすくなり、雑菌の活動しやすい環境が整備されるというわけだ。
汚れを放置する
ニオイの原因は汚れ、つまり汗や皮脂、皮膚の欠片の混合物だ。
雑菌がこうした汚れを分解する(=食べる)際、嫌なニオイが発生する。
しかし長い期間使用すればするほど、どうしても雑菌のエサはどうしても溜まってしまう。
雑菌が寄り付かない革靴にしようと思ったら、定期的な汚れのリセットは必須になってくる。
【みんな間違っている】効果のないお手入れ方法
数多のネット記事には「雑菌・ニオイ対策」と称して様々なツールが紹介されている。
たとえば、「涼感インソール」「消臭スプレー」など。しかし、上記の「間違った使い方」を解決しない限り、残念ながら雑菌は繁殖し続ける。短期的に効果を得られたとしても、ニオイはいずれ再発してしまう。
さきほど、「日本人の革靴リテラシーが低い」と申し上げた。原理原則を理解せず、安易で効果のないツールに手を出し、時間とお金を無駄にする・・そんな事例が後をたたない。
通気性の高いインソールを使う
インソールで雑菌の繁殖が抑えられることはまずない。というのも、本来「インソール」というツールそのものが「雑菌の抑制」を目的としていないからだ。
インソールの本来の目的は「サイズ調整」だ。しかし、一部のメーカーが消臭加工などを施し、「抗菌」などと称して売っているのだ。
だが、こうした加工は使用すると劣化し、効果を失ってしまう。形状などに工夫がされた商品であっても、体重や摩擦でただのプラスチックの板になってしまう。
このように、本来の用途とずれた商品には手を出してはいけない。メーカー側にも責任はあるにせよ、まずは「賢い消費者」になって効果的な商品を見極めることが重要だ。
消臭スプレーに頼る
「臭いものに蓋をする」というアプローチだ。本質的な解決になっていない。
たしかに、消臭スプレーを使えば短期的に「ニオイを抑える」効果を得ることはできるだろう。しかし、汚れや湿気を取り除く効果はない。
ニオイは雑菌が発生させるが、大元の発生源は汚れや湿気だ。これらを除去しない限り、雑菌は発生し続ける。短期的に雑菌までは除去できても、すぐに新しい雑菌が繁殖するということだ。
雑菌が繁殖しない「正しい」革靴の使い方とは?
ここからは、雑菌が繁殖しない革靴の使い方を説明していこう。
ここに書かれている方法を実践するだけで、あなたも「上位20%」の「革靴リテラシー」を手に入れることができる。おそらく、「雑菌が繁殖して革靴が臭い」「革靴は履きづらい」というように革靴で悩むことはもうなくなるはずだ。
3足以上でローテーションする
革靴を複数持つのはもはや常識として捉えていただきたい。なぜなら、革靴の連日使用は非常に不衛生だからだ。
3足である理由は、間に2日の「乾燥期間」を置く必要があるからだ。革靴が1日に吸収した「コップ1杯分」という大量の汗を乾燥させるには、2日間休ませる必要があるのだ。
革靴は必ずしも高いものである必要はない。安い革靴でいいので、必ず3足揃えるようにしよう。
スニーカーより小さいサイズを選ぶ
スニーカーよりもサイズを下げると、あなたの革靴に対するイメージは劇的に変化するだろう。おそらく、「こんなに歩きやすいのか」と驚くはずだ。
どのくらいサイズを下げるべきかは一概には言えないが、一般的に1〜2cmと言われている。
足幅が細い人であれば、下げる量を多めにとったほうがいいだろう。実際に筆者はスニーカーで28cmだが、革靴は25.5cmを選んでいる。「日本人は甲高幅広」と言われていたのは昔の話で、近年若い人を中心に足幅が狭い人が増えている。
一度はシューフィッターのいるお店に足を運び、適切なサイズを測ってもらうといいだろう。リーガルの直営店なら全国にあるので、一度訪問してはいかがだろうか。
少し高めの靴を買う
靴専業のメーカーが作る2万円以上の革靴は蒸れにくい構造になっている。
廉価な革靴は内装にケミカルな素材を用いており、吸湿・放湿性が低い傾向にある。しかし、これらの「少し高い」革靴になると内装にも吸湿性の高いレザーが使われており、足が入る部分に湿気が滞留しにくい。また、乾燥期間にはしっかりと汗を放出してくれるため、2日後には快適な状態で着用することができる。
おすすめはリーガルやスコッチグレイン、またはユニオンインペリアルでもいいだろう。こうした靴専業メーカーの靴は靴底を張り替えることができるため、修理しながら数年単位で愛用することが可能だ。
定期的にクリーニングする
湿気の溜まりにくい状態を作れば雑菌は見違えるほどに繁殖しにくくなる。しかし、そうはいっても汗や汚れは溜まってしまう。
そこで、定期的に水洗いクリーニングをすることが大切だ。頻度は年に1回、夏場も使うのであればシーズン終わりも加えて年2回で十分だ。
「革は水に弱い」というイメージがあるせいか信じられない方もいるだろうが、実は革は「洗える」のだ。興味がある方は下記の記事で詳しく解説しているので、参考にしてほしい。
しかし、丸洗いはコツがいる上に時間と労力がかかるのも事実だ。「趣味として革靴に興味がある」というのでなければ、プロに頼むという選択肢もある。相場は1足3000円程度だ。
有名なのは「くつリネット」というサービスで、郵送での依頼も可能だ。地方にお住まいの場合でもきれいな革靴を使い続けることができるので、ぜひ一度試してみてはいかがだろうか。