革靴が固くて痛い・・・
そんな思いから、革を柔らかくしたいと考えたことはないだろうか。
できることなら根性で履き慣らしたいところだが、痛いままだとストレスになってしまうだろう。そんなときは、革を柔らかくしてみるのも選択肢の1つだ。
しかし、柔らかくするには正しい方法を使わなければ、革靴を傷めてしまう。
今回は革靴を柔らかくする「正しい」方法について解説していこう。
目次
革靴を柔らかくするNGな方法【熱を加えてはいけない】
私たちのような素人が「素材の加工」を行ってはいけない。
ネット上には様々な情報が溢れているが、革の特性を知った上で適切な方法を選択することが重要だ。
その中でも特にNGな例を、素材の特性を交えて解説していく。
熱湯を使う
革に熱を加えてはいけない。
革のようなタンパク質は、熱を加えると変質する。具体的には革が縮んでしまうのだ。
サイズが変わってしまうのはもちろん問題なのだが、縮みは決して均一に起きるとは限らない。靴の部位によって縮みの程度に差が生じ、型くずれを起こしてしまう。
また、靴のパーツがばらばらになる可能性もある。靴の内装や靴底には部分的に接着剤が使われているからだ。接着剤は熱を加えると柔らかくなるため、剥がれやすくなる。
ドライヤーで温める
こちらも革に熱を加えるのでよくない。
加えて、熱することができる部分が必然的に限られるので、ほぼ確実に一部だけ縮む現象に見舞われる。
ある意味で熱湯以上にリスクのある方法と言えるかもしれない。
揉む
オイルを染み込ませたり、ぬるま湯につけて革をもんでいく方法だ。何もせずにただ揉む場合もある。
ビジネスで使うような革靴に関しては、この方法はおすすめしかねる。予期せぬ場所にシワが入る可能性があるからだ。また、かかとやつま先には靴の骨組の役割を果たす芯材が入っている。この部分を下手に扱い、芯材を傷めてしまうと型崩れの原因になってしまう。
逆にワークブーツなど、ある程度ラフな靴であればいいだろう。こうした靴は多少変なシワが入ったところで「味」とする考え方もあるからだ。
革靴を柔らかくするベストな方法
では、革靴を柔らかくするのに最適な方法とはなんだろうか。
それは、革靴に「水分」を入れることだ。革靴が水に濡れたとき、グニャグニャに柔らかくなってしまった経験はないだろうか。当然、ビショビショに濡れてしまえばカビなどの危険がある。しかし、適切な方法で革に水分を補給すれば、革が柔らかくなるのはもちろんのこと、長期的には革靴を長持ちさせることにつながる。
さらに、油分も補給すれば水分補給の効果をより引き出すことができるのだ。
ここからは最適なツールをご紹介しながら、革靴を柔らかくする「正しい」方法を解説していこう。
デリケートクリームで水分補給
革靴を柔らかくするのは「水分補給」が最も効果がある。
最適なツールは「デリケートクリーム」だ。濡れた布で靴を拭いても水分補給はできるが、すぐに乾燥してしまう。乾燥する際に油分まで飛んでしまうため、放置すると逆効果になる。これが「革は水に弱い」と言われる最大の要因なのだ。
しかしデリケートクリームを使えば、ノーリスクで水分補給が可能だ。乾燥のスピードを遅くすることができるからである。
デリケートクリームで革を柔らかくする際のポイントは「最初の脱脂&汚れ落とし」と「少量・回数多め」である。
最初の脱脂&汚れ落とし
たとえ目立たなくても、使用した靴には汚れが付着している。また、新品の靴であっても革靴は油脂を含んでいる。この状態ではデリケートクリームを弾いてしまい、効果が半減してしまう。
脱脂と汚れ落としにはリグロインを使おう。布に含ませて革靴の全体をひと拭きすればOKだ。ただし、リグロインはオイルレザーを使ったワークブーツには適さないので注意してほしい。
またリグロインの脱脂効果は強力なため、肌の弱い人はビニール手袋をはめて作業しよう。
少量・回数多めで塗り込む
汚れと油脂を落としたらデリケートクリームの出番だ。手が軽く濡れるぐらいの量を取り、素早く革に伸ばしていこう。
一度に多く塗らず、少量を繰り返し伸ばしていく。多く塗ってしまうと靴の表面にデリケートクリームの成分が溜まり、カスのようにポロポロと剥がれ落ちてくる。
何度も塗り込んである程度革が柔らかくなったら、次は新しい油分を補給していこう。
油性クリームorオイルで油分補給
革を柔らかくする仕上げはオイルアップだ。また、油分が全くない状態だと革を傷めるため、耐久性の維持にも必要である。
油分補給にはレーダーオイルかクレムがいいだろう。いずれも良質な油脂が含まれており、革を柔らかくするだけでなく今後のお手入れにも威力を発揮する。いずれか好きな方を1つだけ、使ってみてほしい。
デリケートクリームとは違い、油分は少量で問題ない。逆に塗りたくってしまうとリカバーが難しく、ベタついてホコリもつきやすくなってしまう。
クレムを使う場合は両足で米粒3つ分を指にとり、素早く伸ばしていこう。その後15分ほど放置する。
レーダーオイルを使う場合は布を使い、硬く絞った雑巾程度の濡れ具合にとってから塗ろう。時間は20〜30分程度はおいておく。
時間が経ったら豚毛ブラシで丹念にブラッシングしよう。最後に、乾いた綿の布で拭き上げれば完成だ。
SaphirNoir(サフィールノワール) クレム1925 ニュートラル
革靴を柔らかくするには「水分補給」を重点的に
革靴を柔らかくするには水分が必要だ。決して熱を加えることではない。
また、水分と油分を定期的に補給することで、革靴をいい状態で長く履き続けることができる。
今回ご紹介した方法は、そのまま日常のお手入れとしても活用できるということだ。普段のお手入れでは、水分補給はもう少し控えめでもいいだろう。
つまり、革を柔らかくするときは変わった手法を取るのではなく、あくまで定期的なメンテナンスの延長線上の考え方で十分だということ。普段のお手入れの方法については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてほしい。