靴屋や古着屋に行くと、大量の靴が並んでいる。
グッドイヤーウェルト製法の革靴を探しているあなたなら、こう思うはずだ。
「グッドイヤーウェルト製法の革靴の見分け方を知りたい・・・」と。
慣れてしまえば見分けるのが簡単なのがグッドイヤーウェルト製法。
今回はその「見分け方」について解説していこう。
目次
グッドイヤーウェルト製法は「重量」で見分けるのが確実
他サイトを見ると、「コバの張り出し具合」とか「底縫いの縫い目の位置」と書かれている。
もちろん、それらも正解ではある。しかし、
- 数多い製法の中からグッドイヤーウェルト製法を見分ける必要がある
- 他の製法でも、ある程度「ごまかし」が効く場合が多い
ことから、正確な見分けには少々困難が伴う場合があるのだ。
ということは、「グッドイヤーウェルト製法にしかない特徴」はなにか?を考えることが確実な見分け方につながるのである。
では、その特徴とはなんだろうか・・・?
答えは「重量」である。
ノルウィージャンウェルト製法など、グッドイヤーウェルト製法の亜流はある。しかし、そうした亜流には別の目立つ特徴があるため、グッドイヤー製法と見分けるのは簡単である。
市場に多く出回っている「マッケイ製法」や「セメンテッド製法」と比べれば、グッドイヤーウェルト製法は重量が重い傾向にある。構造が複雑で部品点数が多く、おまけに耐久性のある厚めの素材を使うのだから、ごまかしようがないのである。
また、市場では軽い靴が好まれる傾向にある。マッケイやセメントの場合は必然的に軽く済んでしまうため、見た目をどれだけグッドイヤーに近づけようとも重さまで増やしてしまうメリットは少ない。したがって、どれだけ見た目を重厚にしようとも重量は軽い場合がほとんどだ。
他の要素はある程度、ごまかしが効いてしまう
対して、他の特徴はセメント製法やマッケイ製法でも真似ができてしまう。
ただし、本来のグッドイヤーウェルトの特徴であることも確か。重量と合わせて、補助的に見ていくとより確実に見分けることができるようになる。
底縫いの位置が外側になっていること
靴を手にとったら靴底を見てみよう。
縫い目が写真の位置にある場合はグッドイヤーウェルト製法の可能性がある。
これがマッケイ製法だともう少し内側に寄る傾向がある。しかし、マッケイ製法の亜流である「ブラックラピド製法」はグッドイヤーウェルトと全く同じ位置に縫い目が来る。
また、そもそも縫い目が見つからない場合もある。この場合、製法を判別するのは困難だ。
1つは「ヒドゥンチャネル」いう仕上げがされている場合。グッドイヤーウェルト製法でも高級な靴に多い。底縫いを隠すことができるのだ。また、この仕上げはマッケイ製法でも可能だ。この仕上げは革底の場合のみ可能である。
もう1つがミッドソールがある場合。この場合も、底縫いが隠されてしまう。代表的な例でいうとレッドウイングやパラブーツ。これらは底縫いこそ見えないものの、れっきとしたグッドイヤーウェルト製法である。
コバが張り出していること
コバとは靴の外周にある、縫い目が見えている部分のこと。底縫いの逆側である。
グッドイヤーウェルト製法の場合、ステッチの通る場所を確保するためにある程度の張り出しを設ける必要がある。
しかし、セメント製法やマッケイ製法でもコバの張り出しを設けることができる。これが、マッケイやセメントのデザイン上自由度が高いと言われる所以でもある。コバの仕上げ1つで靴の雰囲気を大きく変えることができるのだ。また、「押しぶち」というダミーのウェルトをつけたものも存在する。
したがって、コバの張り出しはあくまで参考程度に見るのがいいだろう。
つま先に丸みがあること
グッドイヤーウェルト製法のつま先をよく見てみると、根元の部分が丸みを帯びていることがわかる。
これは「すくい縫い」という工程によって起きるもので、かつこの丸みの中に厚みのある中底がインストールされているからである。
ただしつま先の部分に関しては見慣れていない人が見分けポイントとして使うのは正直難易度が高い。逆に見慣れてくると、グッドイヤーウェルト製法の靴がどことなくずんぐりと見えてくるようになる。
さらに、ジョンロブなどの高級なグッドイヤーウェルト製法の靴の場合、下手なマッケイ製法の靴よりも丸みを抑えた作りになっていることも多い。グッドイヤーウェルト製法でつま先の丸みを抑えるには、吊り込みと呼ばれる工程において尋常ではない技術力が要求されるのだ。それを、高級靴専業メーカーは平然とやってのけるのである。
見分けるには、ある程度「慣れ」が必要
以上見てきたように、靴の重量をベースに見ていくことが、グッドイヤーウェルト製法の革靴の確実な見分け方であるということがわかった。
しかし、慣れていない人にとって革靴の重量の感覚なんて分かるはずもない。やはり、経験的に身につけていく他ないのである。
お店で確かめるのがおすすめ
では、経験を積むためにはどうしたらいいのだろうか?
それは、グッドイヤーウェルト製法の靴を置いている靴屋さんに行き、実際に手にとって確かめてみることだ。
店員さんにグッドイヤーウェルト製法の靴を出してもらい、重量はどのくらいか確かめるといいだろう。
次にマッケイ製法やセメンテッド製法の革靴を手にとってみよう。グッドイヤーウェルト製法のものよりも軽さを感じるはずだ。
そうして靴の重量を体に覚えさせることで、グッドイヤーウェルト製法の靴を見分けることができるようになっていく。